日本薬理学雑誌
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特集 時間薬理学と時間栄養学による新しい治療戦略の開拓
循環器疾患における時間治療
藤村 昭夫
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2011 年 137 巻 3 号 p. 125-129

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抄録

24時間自由行動下血圧測定法の普及に伴って血圧日内リズムの特徴が明らかになり,その病態学的意義も明らかにされた.特に,昼間に比べて夜間の降圧が10%未満(non-dipper型)の場合には高血圧性臓器障害が進展することや,起床時の急激な血圧上昇が心筋梗塞や脳梗塞の誘発要因の1つであることが知られている.従って,高血圧患者を治療する時には患者毎に血圧日内リズムの特徴を把握し,昼間のみならず夜間や起床時の血圧も適切にコントロールする必要がある.一方,血圧日内リズムに及ぼす降圧薬の影響も種類によって異なり,たとえば,アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬は夕方に投与すると血圧日内リズムがnon-dipper型からdipper型に移行することが多いが,Ca拮抗薬は投与時刻に係わらず昼間と夜間の血圧を同程度に低下させるために,血圧日内リズムに及ぼす影響は小さい.このように降圧薬の血圧日内リズムに及ぼす影響は種類によって異なり,臨床の場ではまず患者の血圧日内リズムの特徴を把握し,それに基づいて適切な降圧薬とその投与タイミングを選択する必要がある.

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