2011 年 137 巻 3 号 p. 141-145
アレルギー性鼻炎の動物モデルにおいて,遺伝的背景が明らかなマウスの利用,特に近年の遺伝子改変マウスの利用により,詳しい病態解析が可能になった.しかし,これまでのマウスのアレルギー性鼻炎の評価には,抗原による誘発後30分以内のくしゃみおよび鼻かき回数が繁用されており,臨床上散見される遅発相反応など長時間に亘る客観的症状観察,あるいは鼻閉の評価は困難であった.そこで我々は,Whole Body Plethysmograph法における呼吸数の変化を幾つかのパラメータと併せて無麻酔下で測定することにより,鼻腔抵抗上昇を反映した新規アレルギー性鼻炎モデルを作製した.卵白アルブミン感作マウスに無麻酔下で経鼻抗原チャレンジすることにより,吸気および呼気共に延長する上気道閉鎖のパターンを示し,呼吸数が有意に減少した.この抗原によって誘発される呼吸数減少は,麻酔下で測定したマウスの鼻腔抵抗上昇値と良好な相関性を示すことから,本実験モデルにおける呼吸数減少は,間接的に鼻閉を反映することが明らかとなった.感作マウスに抗原チャレンジを繰り返した場合,抗原暴露回数に依存した非特異的過敏性反応,抗原特異的即時相および遅発相反応が認められた.さらに,本モデルにおいて種々遺伝子改変マウスを用いたところ,鼻過敏性反応の成立には抗原特異的IgEおよび肥満細胞が,遅発相反応にはインターロイキン-13の寄与が必須であることが明らかとなった.以上,我々が作製したマウスアレルギー性鼻炎モデルは,長期間に亘る非侵襲的呼吸機能測定が可能であり,鼻反応を誘発した際の呼吸機能変化に対する検出感度が優れていた.そして,本モデルで測定する呼吸数変化はアレルギー性鼻炎患者の鼻閉を反映しており,詳細な病態解析ならびにアレルギー性鼻炎治療薬の薬効評価に有用であると思われる.