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日本薬理学雑誌
Vol. 138 (2011) No. 4 P 136-140

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http://doi.org/10.1254/fpj.138.136

特集 急性肺傷害治療戦略の現状と展望

急性肺傷害(acute lung injury: ALI)およびその重症型である急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome: ARDS,以下ALI/ARDSと総称)は肺胞領域の非特異的炎症による肺水腫であり,活性化好中球の肺への集積,肺胞透過性亢進,肺外水分量増大,肺コンプライアンスの低下,肺におけるガス交換能の低下,そして胸部X線上の浸潤影などの所見を有する疾患である.疾患が初めて紹介されてから40年以上が経過した現在でも集中治療の領域において敗血症とならんで未だに死亡率の高い疾患であり,早急な病態の解明と治療法の確立が望まれている.ALI/ARDSは様々な先行疾患に続発する症候群であり,多臓器不全症候群における肺の一分画症として捉えられることが多い.原因としては肺への直接損傷もしくは間接損傷に起因するものがあげられる.頻度の多い直接損傷の基礎疾患は肺炎,誤嚥であり,間接損傷としては敗血症,外傷があげられるが,その他多くの基礎疾患から発症しうる.これまでALI/ARDS治療においてその死亡率を下げることを証明し得た薬物は存在しない.唯一,治療法として死亡率を下げるとのエビデンスを示せたものは6 ml/kgの1回換気量での低容量人工呼吸管理法である.このような人工呼吸管理概念は一般に「肺保護戦略」と呼ばれている.ALI/ARDSの定義は1994年に統一された.この定義自体が非常にシンプルであった故にその後,多くの大規模臨床試験が施行可能となったが,その反面,定義があいまいであることで治療介入によって有用性が見いだせないという批判もある.今後は基礎疾患や病期に応じた薬物治療等によって有用性が示される可能性が期待される.

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