抄録
アクアポリン2(AQP2)は水分子のみを通し,他には一切の分子を通すことはないという特徴をもつ水チャネルである.AQP2は腎臓の集合管で尿濃縮に関わっており,体内水分量調節を担っている.体内が脱水になるとバソプレシン刺激を受けてAQP2は細胞内から細胞表面に移動し,原尿から水のみを再吸収し尿を濃縮する.AQP2の遺伝子異常では体内が重篤な脱水となる腎性尿崩症をきたす.一方,心不全,肝硬変,神経疾患などで問題になることが多い水利尿不全もAQP2の機能異常が原因となっている.さらにAQP2は,その特徴的な動態から膜タンパク質輸送メカニズムの解明においても重要なモデルとなっている.近年次々と新たな知見が報告され,制御機序の全貌が明らかになろうとしている.特にAQP2はモーターコンプレックスを形成し,細胞骨格をコントロールして自らの輸送経路を切り開いていることが明らかになったことはチャネルなどの膜タンパク質輸送研究に新たな展開を生む可能性がある.水チャネルの分子動力学的実体が明らかになることにより尿崩症および水利尿不全の新規治療法の開発が進むことが期待されている.