日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
DPP-4阻害薬リナグリプチン(トラゼンタ®)の薬理学的特性および臨床成績
大村 剛史林 直之Jeffrey Encinas
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 139 巻 4 号 p. 174-183

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抄録

リナグリプチン(トラゼンタ®)は,ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)に対して選択性が高く,長時間持続性の強力なDPP-4阻害薬である.In vitro試験において,リナグリプチンは競合的であり,かつ可逆的にヒトDPP-4を阻害する.DPP-4を高発現させたCaCo-2細胞抽出物中の膜結合型DPP-4に対して阻害作用(IC50=1 nM)を示し,ヒトの血漿中においても同様の阻害活性(IC50=3.6 nM)を示した.また,in vivoにおいても,種々の動物においてDPP-4活性を抑制し,病態モデルにおいても,耐糖能改善やHbA1cを低下することが明らかとなっている.国内第III相試験においてリナグリプチンは12週時のHbA1c値変化量においてプラセボと比較し約0.9%,26週時のHbA1c値変化量においてボグリボースに対しては0.3%の低下を示し,ボグリボースを上回る血糖コントロールの改善効果を示した.さらに,リナグリプチンは,全般的に優れた安全性,忍容性を有している.すなわち,リナグリプチンの低血糖症発現率は単独投与においてプラセボと同程度であり,単独投与による低血糖症発現のリスクは低いと考えられる.また,本剤は他の経口血糖降下薬で認められる胃腸障害や体重増加の懸念が少ないことから,既存の血糖降下薬と比較して副作用のリスクが少ない良好な安全性プロファイルを有する薬剤である.結論として,リナグリプチンは忍容性に優れるとともに,強力にDPP-4活性を阻害することにより,2型糖尿病患者のHbA1cを低下させる.また,既存の血糖降下薬に比べてリナグリプチンは安全域が広く,腎機能の程度の異なった2型糖尿病患者においても同一用量で投与できることから,既存の糖尿病治療薬に比べ加齢等に伴う腎機能低下の患者への注意喚起の必要性は少なく,より多くの2型糖尿病患者へ第一選択薬として投与可能な薬剤である.

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© 2012 公益社団法人 日本薬理学会
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