日本薬理学雑誌
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特集 循環器疾患治療薬の研究戦略
新規アンジオテンシンAT1受容体ブロッカー アジルサルタンのinvitroおよびinvivo薬理作用
楠本 啓司
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2012 年 139 巻 6 号 p. 236-240

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抄録

新規アンジオテンシンII(AII)タイプ1(AT1)受容体ブロッカー(ARB)であるアジルサルタン(azilsartan,TAK-536)の薬効薬理作用を明らかにする目的で,種々のin vitroおよびin vivo試験を実施した.ヒトAT1受容体を用いた結合実験の結果,アジルサルタンは受容体へ強固に結合し,他のARBと比較して受容体からの解離が極めて緩やかであることが明らかとなった.アジルサルタンの持つこの特徴はAIIにより惹起される細胞内情報伝達系の活性化や血管収縮反応に対する抑制効果においても認められており,薬物洗浄後においても他のARBと比較して持続的なAII拮抗作用を示した.またアジルサルタンは正常ラットにおいて経口投与により24時間に渡って用量に依存したAII昇圧抑制作用を示し,その作用は既存ARBであるカンデサルタン シレキセチルおよびオルメサルタン メドキソミルよりも持続的であった.さらに高血圧自然発症ラット(SHR)において,アジルサルタンは2週間の反復経口投与により用量に応じた降圧作用を示し,その作用はオルメサルタン メドキソミルと比べて強力かつ持続的であった.またアジルサルタンはSHRで認められるインスリン感受性低下を2週間の反復経口投与により有意に改善し,その作用はオルメサルタン メドキソミルよりも強力であった.さらに2型糖尿病モデルであるZucker diabetic fattyラットにおいて,アジルサルタンは4週間の反復経口投与によりカンデサルタン シレキセチルよりも強力な尿中アルブミン排泄抑制作用を示した.以上の成績より,アジルサルタンは優れたプロファイルを有する新たなARBとなることが期待される.

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