日本薬理学雑誌
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特集 循環器疾患治療薬の研究戦略
高血圧治療薬の併用療法:ARBとCCB併用による臓器保護効果
水野 誠
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2012 年 139 巻 6 号 p. 246-250

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抄録

高血圧症の治療に関し,血圧を適切なレベルまで低下させることが第一の目標となるが,治療の最終的な目的は高血圧に合併する臓器障害を予防することにある.高血圧症患者の多くは本態性高血圧症に分類され,その原因には多様な因子が関与している.そのため1種類の薬剤では血圧がコントロールできず,複数の薬剤の併用が必要になる患者が多い.その併用を考えるうえでも,臓器保護作用を視野に入れて降圧剤を選択する必要がある.降圧剤の中でも,特に臓器保護作用が強いと考えられているのがアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とカルシウム拮抗薬(CCB)であり,その臓器保護作用に注目して検討を行った.Dahl食塩高血圧ラットは,高血圧の進行と共に臓器障害を発症し死亡するモデルである.本モデルにおいて,ARBのオルメサルタンメドキソミル(OLM)とCCBのアゼルニジピン(AZL)の血圧に影響を与えない用量を併用したところ,各々の単剤に比べ相乗的な延命作用が認められた.この延命作用は,血圧を低下させない用量でも認められ,血圧を低下させる用量では,延命効果はさらに増強した.OLMとAZLのような降圧剤併用においては,血圧低下に加え,降圧作用以外のメカニズムも臓器保護作用に大きく関与すると考えられる.降圧作用以外のメカニズムとして,抗炎症作用,抗酸化作用,抗線維化作用,抗増殖・肥大作用などが考えられ,そこには薬剤クラスに共通した作用と化合物固有な作用が関与し得る.OLMとAZLの併用により,高血圧に伴う心血管疾患の罹患率および死亡率の減少への貢献が期待できる.

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