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日本薬理学雑誌
Vol. 139 (2012) No. 6 p. 265-274

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http://doi.org/10.1254/fpj.139.265

新薬紹介総説

フィンゴリモド塩酸塩(イムセラ®/ジレニア®)は,世界初のスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体1型(S1P1受容体)の機能的アンタゴニストであり,経口投与が可能な新規の多発性硬化症治療薬である.免疫系で中心的な役割を担うリンパ球は,リンパ節などの二次リンパ組織,リンパ液および血液中を循環し,抗原と出会った際に免疫応答を引き起こす.リンパ球循環の過程で,リン脂質メディエーターであるS1Pと,その受容体の1サブタイプでリンパ球上に存在するS1P1受容体は,二次リンパ組織からリンパ液中へのリンパ球の移出に必須の役割を果している.フィンゴリモドは冬虫夏草の一種Isaria sinclairii 菌由来の天然物マイリオシンの構造変換によって見出された新規化合物であり,スフィンゴシンと類似構造を有するためスフィンゴシンキナーゼによってリン酸化され,S1P1受容体の内在化と分解を誘導することで機能的アンタゴニストとして作用する.その結果,S1P1受容体を介した二次リンパ組織からのリンパ球移出が抑制され,リンパ球の体内循環が制御される.フィンゴリモドは多発性硬化症の動物モデル(自己免疫性脳脊髄炎)において強力な再発抑制/治療効果を発揮するが,これはS1P1受容体への機能的アンタゴニスト作用によりTh17細胞などの自己反応性リンパ球のリンパ節からの移出が抑制され,中枢神経組織への浸潤が阻止されたためと考えられる.再発寛解型多発性硬化症患者を対象とした臨床試験で,フィンゴリモド(0.5 mg経口投与)はインターフェロン-β-1a(アボネックス®,筋注)を上回る優れた再発抑制/治療効果を示すことが明らかにされ,米国,欧州,日本など50を越える国と地域で新規治療薬として承認された.以上の薬理学的特徴および臨床成績から,フィンゴリモドは多発性硬化症に対して有用な治療薬になるものと考えられる.

Copyright © 2012 公益社団法人 日本薬理学会

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