日本薬理学雑誌
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特集 慢性疼痛治療薬の研究開発戦略
神経因性疼痛治療薬としての電位依存性ナトリウムチャネル遮断薬の探索研究
渡邉 修造
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2012 年 140 巻 5 号 p. 201-205

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抄録

電位依存性ナトリウムチャネルは,神経細胞の興奮や伝達を担っており,痛みの神経伝達に深く関与することが知られている.現在までに9種類(Nav1.1~Nav1.9)の電位依存性ナトリウムチャネルが報告されているが,その中でNav1.7,Nav1.3,Nav1.8の3つのサブタイプは神経障害性疼痛との関連性を示唆する報告が多い.現在,臨床ではメキシレチン,リドカインなどの電位依存性ナトリウムチャネル遮断薬が処方されている.これら既存の治療薬は,サブタイプ非選択的な薬剤であることからNav1.7,Nav1.3,Nav1.8のいずれにも作用することで鎮痛効果を示すと考えられる.また,同時に心臓に発現するNav1.5や脳に高発現するNav1.1,Nav1.2に対しても作用することから,薬効を示す用量において徐脈や中枢性の副作用が認められ,十分な治療効果が得られていない.そこで本稿では,サブタイプ選択的な電位依存性ナトリウムチャネル遮断薬を探索するために,本研究所で実施している二つの評価方法について紹介する.一つは,浜松ホトニクス社と共同開発している新しい装置を用いた評価方法であり,本装置により電位依存性ナトリウムチャネルの活性を正確に,また,効率よく測定することが可能である.もう一つは,痛みの動物モデルにおける電位依存性ナトリウムチャネル遮断薬の有効性を予測するために,本研究所が開発したin vitro評価系について紹介する.これら二つの評価方法は,サブタイプ選択的な電位依存性ナトリウムチャネル遮断薬を効率的に見出すための有用な方法であると考えられる.これらの方法により,神経障害性疼痛に苦しむ多くの患者のために,少しでも早く新しい治療薬が見出されることが期待される.

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© 2012 公益社団法人 日本薬理学会
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