日本薬理学雑誌
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創薬標的1分子の姿を捉える―静止画から動画へ―
『チャネル1分子を動画で見たい』 ABCトランスポーターCFTRチャネルのATP駆動性ゲーティング:静止画から動画へ
相馬 義郎山下 隼人
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2013 年 141 巻 5 号 p. 230-234

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抄録

ABCトランスポーターのメンバーであるCystic Fibrosis Transmembrane conductance Regulator(CFTR)は,呼吸器および消化管上皮の管腔側膜に発現して陰イオンチャネルとして機能し,分泌・吸収機能における中心的役割を果たしている.CFTRの機能不全は,白人種に多く見られる致死性遺伝疾患・嚢胞性線維症Cystic Fibrosis(CF)をはじめとし,慢性膵炎やCOPDなど多くの呼吸器および消化器疾患の病態への関与が示唆されている.CFTRは,ABCトランスポーターに共通したATP加水分解機構によってチャネルゲートが開閉し,その活性はPKAによるリン酸化によって制御されている.このCFTRの病因性変異体の活性増強薬の開発のために,CFTR分子の構造・機能および作動メカニズムの解明の研究が,特に欧米を中心に精力的に行われてきた.現在まで,CFTRを含めた様々な創薬標的分子のメカニズムの研究には,電気生理学等による機能測定と結晶構造に基づいた構造モデルの分子動力学シミュレーションを組み合わせたアプローチがとられてきたが,この手法で得られるチャネル分子等の機能発現に伴う連続的な構造変化-動態についての情報は,あくまで類推に過ぎない.しかし,最近,タンパク質1分子の動態を電子顕微鏡レベルの空間分解能とビデオレートに匹敵する時間分解能での直接観察を可能にする高速原子間力顕微鏡(高速AFM)が開発された.この創薬標的分子の作動中の動態を動画として直接観察できる強力な1分子測定法の登場により,創薬標的分子の立体構造(静止画)を用いた薬物設計「構造ベースドラッグデザイン」をさらに発展させた創薬標的の分子動態の直接観測(動画)に基づいて薬物設計を行なう「分子動態ベースドラッグデザイン」の今後の発展が期待される.

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