日本薬理学雑誌
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特集 消化器疾患の病態に関わる新たな展開
グレリンの大腸運動促進作用
平山 晴子樅木 勝巳椎名 貴彦志水 泰武
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2014 年 143 巻 6 号 p. 270-274

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抄録

グレリンとは,主に胃から分泌される,28個のアミノ酸からなるペプチドホルモンである.他のホルモンにはないグレリンの特徴として,3番目のセリン残基に脂肪酸による修飾を受けていることが挙げられる.この脂肪酸修飾がグレリン受容体を介した作用発現には必須である.生体内にはグレリンの脂肪酸修飾を持たない型も存在し,デスアシルグレリンと呼ばれるが,脂肪酸修飾を欠くというその構造上,グレリン受容体に対しては不活性型である.しかし近年では,デスアシルグレリンのグレリン受容体以外の経路を介する作用についても多数の報告がなされている.グレリンの作用としては,成長ホルモン分泌促進や,食欲亢進,エネルギー消費の抑制をはじめとし,循環器系への作用,消化器系への作用と,その作用は非常に多岐に渡る.グレリンの消化管運動に対する作用としては,胃や小腸,大腸の運動性を亢進させることなどがこれまでに報告されている.また,消化器疾患におけるグレリンの関与についてもさまざまな知見が報告されており,今後の研究の展開が期待されている.我々はこれまでに,in vivoの実験系を用い,グレリンの脊髄腰仙髄部の排便中枢を介する大腸運動への作用について研究してきた.本稿ではこの結果について,実験系も含め紹介する.

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