日本薬理学雑誌
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がん患者のサポートケアを目指したトランスレーショナルリサーチの提言
がん性疼痛の新規治療薬の開発―マウス大腿骨がんモデルにおける血小板活性化因子(PAF)阻害薬の鎮痛作用
森田 克也本山 直世北山 友也白石 成二土肥 敏博
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2015 年 146 巻 2 号 p. 87-92

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抄録

がん患者にとって最も頻度の高い症状は痛みであり,がん性疼痛はどの病期にも発症するが,持続性の痛みが大半を占め,その痛みの30%は耐え難い痛みである.さらに痛みは患者を不安や恐怖に追い込み,その苦痛を増大させる.がん患者において痛みの克服は生活の質(QOL)の向上に重要な問題であり,最優先で対応すべき課題である.骨がん疼痛は,がん性疼痛のなかで最も深刻であり,既存の鎮痛薬が奏効しない.がん性疼痛の治療に有効な新規鎮痛薬の開発が望まれている.血小板活性化因子(PAF)阻害薬は,最近いくつかの神経障害性疼痛モデル動物において有効性が実証された.本研究は,マウス大腿骨がん(FBC)モデルを使用して骨がん疼痛に対するPAF阻害薬の鎮痛効果を検討した.PAF阻害薬はFBCマウスにおいて,極めて少量で疼痛緩和作用を示し,この効果はモルヒネと比較してはるかに長期間持続した.がん細胞移植後の疼痛発生の前にPAF受容体拮抗薬を投与し,引き続き反復投与することによって,疼痛の発生を抑制することができた.また,その効果に耐性を生じることはなかった.誘導型PAF合成酵素(LPCAT2)量は,腫瘍細胞の移植後のマウス脊髄で著しく増加していた.PAF阻害薬の鎮痛作用の機序に,少なくとも脊髄のPAF受容体阻害が含まれる可能性を示唆した.FBCマウスにおいて,PAF阻害薬とモルヒネとの併用は,モルヒネの疼痛緩和作用を著しく増強し,モルヒネの疼痛緩和作用をもたらす必要量を大幅に減少させた.PAF阻害薬とモルヒネとの併用は,モルヒネの投与量を軽減できることにより,モルヒネの便秘作用を軽減することができた.PAF阻害薬の反復投与により延命効果が認められた.がん性疼痛患者での予後の改善が期待される.以上の知見は,PAF阻害薬は単独あるいはオピオイドとの併用において,がん性疼痛の新たな治療戦略を提唱し,患者のQOLを改善し得ることを示唆している.

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