日本薬理学雑誌
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新たな治療戦略につながる長鎖脂肪酸受容体GPR40/FFAR1およびGPR120/FFAR4を介した生体作用とその分子機構
脊髄痛覚伝達における遊離脂肪酸受容体GPR40/FFAR1の関与
栗原 崇宮田 篤郎
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2015 年 146 巻 6 号 p. 309-314

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抄録

G protein-coupled receptor 40/free fatty acid receptor 1(GPR40/FFAR1)は,インスリン分泌細胞である膵ランゲルハンス島β細胞に高発現するGタンパク質共役型受容体として発見され,その後の機能解析から,遊離中・長鎖脂肪酸刺激によるグルコース依存性のインスリン分泌促進作用に関与することが判明し,低血糖リスクの少ない新たなインスリン分泌促進薬創薬の標的として注目されている.一方,GPR40は中枢神経系にも発現が知られているが,その機能については未解明な点が多い.我々は,マウス脊髄にGPR40が発現していることを確認すると共に,一次知覚神経節および脊髄後角神経細胞に発現していることを見出し,さらに末梢での炎症および神経障害に伴い,これらの組織においてGPR40タンパク質発現レベルが上昇することを見出した.続いて,マウス炎症性疼痛モデル(カラゲニンモデル,完全フロイントアジュバントモデル)および末梢神経障害性疼痛モデル(L4/5脊髄神経結紮モデル)を用い,機械刺激あるいは熱刺激に伴う疼痛様行動に対するGPR40作動薬の効果を検討したところ,くも膜下腔投与により疼痛様行動が減弱すること,その減弱効果はGPR40拮抗薬により拮抗されることを見出した.一方,GPR40拮抗薬を単独でくも膜下腔投与すると,アジュバントおよび神経障害モデルにおいて,機械刺激に対する疼痛様行動が惹起された.GPR40作動薬の鎮痛効果の作用機序を検討するため,脊髄スライス標本を作製し,後角膠様質神経細胞から自発性EPSCsを記録した.GPR40作動薬は,疼痛モデルマウスにおいて自発性EPSCsの平均振幅には影響を与えなかったが,平均発生頻度の有意な抑制効果を示した.以上の結果は,GPR40が鎮痛薬開発の新規ターゲットとして有望であることを示唆する.

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