日本薬理学雑誌
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総説
バリア機能と自然免疫―アレルギーの発症・進展と創薬ターゲット―
田中 宏幸山下 弘高稲垣 直樹
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2017 年 149 巻 5 号 p. 235-239

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抄録

アレルギーの原因となる抗原の多くはプロテアーゼ活性を有し,外界とのバリアとして働く上皮系細胞を種々の環境因子とともに刺激する.上皮系細胞からは,この特異的な刺激によりdanger signals(ATPや尿酸)やサイトカイン(IL-25,IL-33,thymic stromal lymphopoietin(TSLP))が産生され,抗原特異的な2型免疫応答の方向性が決定される.近年,3種類の自然リンパ球(innate lymphoid cells:ILCs)が発見され,特に2型ILCs(ILC2)がアレルギーの発症や病態形成に関与することが明らかになりつつある.ILC2は抗原受容体を持たない代わりに,上述のサイトカインの受容体を発現し,それらの刺激を受けた後にヘルパー2型T細胞(Th2)とは比較にならないほどの大量のTh2サイトカインを産生することが特徴の一つである.したがって,抗原侵入部位において抗原特異的なTh2免疫応答が開始される前にIL-5やIL-13などのサイトカイン産生を介し好酸球増多や粘液産生を誘導することにより,抗原や寄生虫排除に重要な役割を有すると考えられる.ILC2の活性化はアラキドン酸代謝産物によっても生ずる.特にシステイニルロイコトリエン(cysLTs)やプロスタグランジンD2はそれぞれcysLT1受容体やCRTh2受容体を介しILC2を活性化することから,これら受容体拮抗薬がILC2活性化抑制薬となり得る.一方,ILC2はIL-33の刺激とともにTSLPの刺激を受けるとステロイド抵抗性になることから,特にTSLPのシグナルが治療標的として注目されている.また,近年,IFNsやIL-27,PGI2など内因性のILC2活性化抑制因子が相次いで発見されていることから,アレルギー性疾患の治療への応用が期待される.

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