日本薬理学雑誌
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特集:ミトコンドリア品質管理の生物学的理解とその医療応用
ミトコンドリアにおけるタンパク質分解とストレス応答
関根 史織
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2017 年 149 巻 6 号 p. 264-268

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抄録

我々の着目するphosphoglycerate mutase 5(PGAM5)は,ヒスチジンを酵素活性中心とする酵素学的にユニークなSer/Thrプロテインホスファターゼである.また,N末端の膜貫通ドメインを介してミトコンドリア内膜にターゲットすることがわかっており,その細胞内局在においても興味深い特徴を持つ.我々は,ミトコンドリアにストレスを負荷すると,PGAM5がミトコンドリア局在のプロテアーゼによって膜貫通ドメイン内での切断(膜内切断)を受けることを見出した.さらに最近,他の研究室から,切断型PGAM5がアポトーシス促進機能を有する可能性が提唱され,PGAM5膜内切断とストレス応答との関わりが示唆されている.二重膜構造のオルガネラであるミトコンドリアには,内膜,膜間腔,そしてマトリックスのそれぞれのコンパートメントに,多種類のプロテアーゼが存在している.先に挙げたPGAM5以外にも様々なタンパク質がこれらミトコンドリア局在のプロテアーゼにより切断制御を受ける.さらに,最近の研究から,こうしたミトコンドリアにおけるタンパク質の切断・分解が,多様なかたちで,細胞やミトコンドリア自身のストレス応答に寄与していることもわかってきた.本稿では,PGAM5について我々が明らかにしてきた知見を含め,国内外の報告を紹介するとともに,ミトコンドリアにおけるタンパク質分解の役割について,ストレス応答への関与という観点から,最近の知見を概説したい.

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