日本薬理学雑誌
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特集:医薬品評価に活用できる新しいアレルギー疾患モデル
抗原特異的CD4陽性T細胞の核移植によるアレルギー性炎症急速発症モデルの樹立
神沼 修井上 貴美子佐伯 真弓形山 和史森 晶夫小倉 淳郎
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2017 年 150 巻 2 号 p. 83-87

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抄録

CD4陽性T細胞は,アレルギー性炎症の発症に重要な役割を担う.感作マウスの抗原誘発アレルギー性気道炎症モデルにおける,マスト細胞欠損マウスの利用やCD4陽性T細胞除去実験によって,その病態がCD4陽性T細胞に大部分依存していることを示した.さらに,抗原特異的CD4陽性T細胞を正常マウスに移入して抗原暴露することで,様々な臓器にアレルギー性炎症を誘導できた.このようなT細胞依存性のアレルギー性免疫応答を簡便かつ迅速に解析できるモデル構築を目的として,抗原特異的CD4陽性T細胞を由来とするクローンマウスの作出を試みた.種々抗原で感作したマウスより得たCD4陽性T細胞を,短期間in vitro刺激培養したドナー細胞の核移植を行ったところ,さまざまなクローンマウスが誕生した.その再構成T細胞受容体(TCR)α/β鎖を同定し,genotyping法を構築した.多くのクローンマウスのCD4陽性T細胞は,感作抗原に反応して増殖した.その後,さまざまなT細胞サブセットへ分化したことから,再構成TCRの違いによって異なる免疫応答が誘導されることが示唆された.In vitroでの抗原反応性には,核移植ドナーT細胞由来の再構成TCRα/β鎖の両者が必要であった.野生型マウスに十回以上ダニ抗原を経気道的に反復暴露しても,殆ど気道炎症は惹起されないのに対し,ダニ抗原特異的CD4陽性T細胞から作出したクローンマウスでは,僅か数回の暴露によって,強い気道内炎症細胞浸潤と気道過敏性亢進がみられた.また興味深いことに,再構成TCRαまたはβ鎖の片方だけを発現するマウスでも,気道炎症は亢進した.ドナーCD4陽性T細胞の抗原特異的TCRを発現するクローンマウスの作出に成功した.本マウスを用いて,アレルギー性炎症病態を短期間に解析できることから,各種アレルギー疾患モデル,薬物評価への応用が期待される.

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