日本薬理学雑誌
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特集:ユニークな天然物資源を活かした,地域産業,国際化,医療に貢献する薬理学研究
パラグアイ原産ハーブ,Cyclolepis genistoides D. Don(パロアッスル)の抗糖尿病作用
佐藤 洋美船木 麻美木村 友紀住友 麻衣吉田 博也奥村 明子深田 秀樹細山 浩黒田 正幸大川 柊弥樋坂 章博上野 光一
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2020 年 155 巻 4 号 p. 202-208

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抄録

Cyclolepis genistoides D. Don(一般名パロアッスル;Palo)の抽出物は,南米パラグアイ共和国で糖尿病や腎臓疾患への効果を期待して伝承的に飲用されており,日本ではサプリメントとして販売されている.本研究では特にインスリン抵抗性に焦点を当て,Paloの抗糖尿病活性のメカニズムを解明することを目的とした.Paloは,脂肪分化の主要な調節因子であるPPARγの調節により,3T3-L1細胞の成熟脂肪細胞への分化を促進し,アディポカイン発現レベルを調節した.ヒト脂肪細胞においても,Paloの添加により3T3-L1とほぼ同様の傾向が確認された.生体におけるPaloの影響を確認するため,高脂肪食(HFD60)を負荷するC57BL/6Jマウスの肥満誘導モデルにおいて250 mg/kgまたは1000 mg/kgを強制経口投与し,週5日・14週間の投与を継続した.Palo 250 mg/kg投与群では,PPARγおよびその標的であるadiponectin mRNA発現の増加とともに,皮下脂肪重量を減少させる傾向が確認された.また,別のインスリン標的細胞として,筋肉分化への影響を調べた.C2C12マウス筋芽細胞においてPaloは,IGF-1,myogenin,ミオシン重鎖(MHC)などの筋分化マーカーの発現を濃度依存的に増加させ,また5’-AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化を誘導した.さらに,分化誘導条件下でPaloは筋管形成を促進した.以上より,Paloは脂肪細胞,筋肉細胞の分化や成熟機能に多彩に作用することが明らかとなり,脂肪細胞においてはPPARγ誘導作用が種を超えて機能することが示唆された.

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