2021 年 156 巻 1 号 p. 37-46
ギルテリチニブフマル酸塩(販売名「ゾスパタ®錠40 mg」)は,FMS様チロシンキナーゼ3(FMS-like tyrosine kinase 3:FLT3)阻害作用を有する新規急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)治療薬である.「初回再発又は治療抵抗性のFLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病」を予定される効能・効果として2015年10月に先駆け審査指定制度の対象品目の指定を受け,2018年9月に「再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」を効能・効果として製造販売承認された.非臨床試験で,ギルテリチニブフマル酸塩は,FLT3等のチロシンキナーゼを阻害し,変異型FLT3を発現させたBa/F3細胞の増殖を抑制した.また,変異型FLT3の1つであるFLT3の膜近傍ドメインで遺伝子内縦列重複変異を発現するヒトAML細胞株(MV4-11細胞)を皮下に移植したマウスで,腫瘍細胞の増殖を抑制又は腫瘍を退縮させ,さらに同細胞を骨髄に移植したマウスで延命作用を示した.臨床試験では,ギルテリチニブフマル酸塩は20~450 mg/日の範囲でおおむね用量比例的な薬物動態を示し,発熱性好中球減少症や貧血等の骨髄抑制関連事象の報告が認められたものの忍容性は良好であった.また,再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性AML患者を対象とした複数の臨床試験で,完全寛解又は部分的血液学的回復を伴う完全寛解を達成した患者の割合,全生存期間をはじめとする複数の抗腫瘍効果を示す指標で,ギルテリチニブフマル酸塩の臨床的有用性を支持する結果が得られた.これらの結果から,ギルテリチニブフマル酸塩は,再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性AML患者にとって有用な治療選択肢になると考えられる.