日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
抗悪性腫瘍薬カボザンチニブ(カボメティクス®錠)の薬理学的特性及び臨床成績
大坂 剛山口 直也原 隆人
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 156 巻 5 号 p. 303-311

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抄録

カボザンチニブはMET,VEGFR2,AXLなどを阻害する,受容体型チロシンキナーゼ阻害薬である.MET,AXLは腫瘍細胞の生存・増殖・浸潤・転移,さらには分子標的薬の耐性化にも関与しており,腎細胞癌,肝細胞癌などで過剰発現が報告されている.本剤はこれらの標的を同時に阻害することで,優れた抗腫瘍効果を発揮すると考えられている.血管新生阻害薬による治療後に増悪した腎細胞癌患者を対象とした第Ⅲ相試験においては,主要評価項目である無増悪生存期間において,カボザンチニブは対象群であるエベロリムスと比べ有意な延長が認められた.また,前治療歴を有する進行肝細胞癌患者を対象とした第Ⅲ相試験においても,主要評価項目である全生存期間で,プラセボと比べカボザンチニブで有意な延長が認められた.これらの結果によりカボザンチニブは2020年に,カボメティクス®錠20 mg,同60 mgの製品名で,根治切除不能又は転移性の腎細胞癌及び,がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌の治療薬として本邦で承認されている.さらに,カボザンチニブは免疫に有利な環境を促進し,PD-1チェックポイント阻害薬との併用投与による相乗効果を生み出す可能性が示唆されている.未治療の進行腎細胞癌を対象としたカボザンチニブとニボルマブの併用療法の有効性を検討した第Ⅲ相試験においては,主要評価項目の無増悪生存期間は対象群のスニチニブと比べ,カボザンチニブとニボルマブ併用療法群で有意な延長を認めた.また,現在本邦においても,アテゾリズマブとカボザンチニブ併用療法を検討する3つのグローバル第Ⅲ相臨床試験であるCONTACT試験が非小細胞肺癌,去勢抵抗性前立腺癌,腎細胞癌を対象として進行中であり,今後有効性の検証が期待される.

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