日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害薬ペミガチニブ(ペマジール®錠4.5 mg)の薬理学的特徴および臨床試験成績
加峰 弘毅武井 哲子近藤 翠北澤 和哉原田 卓
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 156 巻 6 号 p. 392-402

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抄録

ペミガチニブ(製品名:ペマジール®錠4.5 mg)は,米国Incyte社により創出された新規の線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害薬である.がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がんを効能又は効果として,2021年3月に製造販売承認取得,同年6月に販売開始された.ペミガチニブはFGFRのキナーゼ部位に結合し,FGFR1~3のキナーゼ活性を選択的に阻害することが示された(IC50,0.39~1.2 nM).培養細胞での検討ではペミガチニブはFGFR1およびその下流のシグナルであるERK1/2やSTAT5のリン酸化を濃度依存的に抑制した.また,がん細胞の増殖に関してペミガチニブはFGFR13に遺伝子異常をもつ各種がん細胞への増殖抑制効果が認められた.FGFR2の遺伝子融合を有する胆管がん患者由来の腫瘍組織片をヌードマウスに移植した患者腫瘍組織移植モデルマウスを用いた検討では,ペミガチニブ投与により濃度依存的な腫瘍退縮が確認された.国内および海外の第Ⅰ相試験(INCB 54828-101および102試験)ではペミガチニブに対し良好な忍容性が確認された.胆管がん患者を対象に行われた国際共同第Ⅱ相試験(INCB 54828-202試験)ではFGFR2の融合遺伝子または再構成を有する患者に対し主要評価項目である奏効率に改善を認め,その有効性が示された.安全性ではペミガチニブの作用機序に基づいた副作用が認められたものの,管理可能であり,良好な安全性プロファイルを示した.ペミガチニブはこれまで限られていた胆道がんにおける標準治療不応後の二次薬物治療においてFGFR2融合遺伝子を標的とした新たな治療選択肢として貢献することが期待される.

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