日本薬理学雑誌
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特集:精神・神経疾患の機能解析イノベーション ~分子レベルから in vivo 可視化まで~
AMPA受容体を可視化するPET薬剤により見えてきた精神疾患発症の分子基盤
宮﨑 智之
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2022 年 157 巻 3 号 p. 196-199

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抄録

興奮性グルタミン酸AMPA受容体は脳内情報伝達の最重要分子である.発表者らはヒト生体脳でAMPA受容体を可視化するPET薬剤([11C]K-2)の開発に世界で初めて成功した.精神神経疾患患者のAMPA-PET撮像により,疾患の分子病態を疾患横断的に明らかにし,その表現型に基づいた疾患動物モデルの作出,最適化,解析を行ってきた.こうした基礎・臨床の融合研究により,複数の精神神経疾患の生物学的基盤を確立できると期待される.これまでヒト生体でAMPA受容体を可視化できず,適切な対象疾患・患者が絞れないことにより世界的に開発が滞ってきたAMPA受容体を標的とした治療法の開発がAMPA-PET薬剤の応用により可能となり,「AMPA受容体を見て,治療する」という分子レベルのエビデンスに基づいた革新的診断治療法開発の礎を作ることが出来ると期待される.

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