日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
T細胞性リンパ腫治療薬 デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)(レミトロ点滴静注用300 μg)の非臨床研究と臨床試験成績
椎葉 洋之武知 厚吏朝倉 省二川口 崇佐藤 誠孝
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2022 年 157 巻 5 号 p. 376-382

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抄録

デニロイキン ジフチトクス(Denileukin Diftitox:DD)は,ジフテリア毒素(Diphtheria Toxin:DT)の部分的アミノ酸配列とヒトインターロイキン-2(Interleukin-2:IL-2)の全アミノ酸配列(IL-2ドメイン)が融合した遺伝子組換えタンパク質である.DDは,腫瘍細胞に発現するIL-2受容体(Interleukin-2 Receptor:IL-2R)に結合し,細胞内へ取り込まれた後,アデノシン二リン酸リボシル化酵素活性を有するDT断片がタンパク質合成を阻害し,細胞死を誘導する.また,DDはヒトT細胞性リンパ腫由来細胞株において,IL-2ドメインにより高親和性及び中親和性IL-2Rの双方に結合してT細胞性リンパ腫に対する増殖抑制作用を示すことが示された.E7777は,DDを有効成分とするE7272(商品名(米国)ONTAK,国内未承認)の純度を向上させた製剤である.再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(Peripheral T-cell Lymphoma:PTCL)及び皮膚T細胞性リンパ腫(Cutaneous T-cell Lymphoma:CTCL)を対象とした国内第I相試験では,用量制限毒性の評価に基づきE7777の最大耐用量及び推奨用量が9 μg/kg/日(各サイクル1~5日目に投与)となった.国内第II相臨床試験では,奏効率が36.1%と既存療法に匹敵する抗腫瘍効果が示され,CD25の発現状態にかかわらずE7777は奏効を示した.一方,Grade 3以上の有害事象が94.6%に発現し,重篤な有害事象として毛細血管漏出症候群,横紋筋融解症等が発現したこと等から,関連事象の注意喚起とともに安全性監視活動が継続されている.以上の研究結果より,E7777は,再発又は難治性のPTCL/CTCLを効能・効果として2021年3月,本邦で製造販売承認を取得し,新たな治療薬となった.

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