日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
直接作用型第Xa因子阻害薬に対する中和薬 アンデキサネット アルファ(オンデキサ®静注用200 mg)の薬理学的特性と臨床試験成績
矢島 利高東森 光雄髙田 知江笹邊 俊和
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2023 年 158 巻 1 号 p. 89-100

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抄録

アンデキサネット アルファは,ヒト第Xa因子の遺伝子組み換え改変デコイタンパク質で,第Xa因子阻害薬に対しておとり結合タンパク質として機能し,第Xa因子阻害薬が内在性第Xa因子に結合するのを阻害することで抗第Xa因子活性を低下させて中和する.本邦では「直接作用型第Xa因子阻害剤(アピキサバン,リバーロキサバン又はエドキサバントシル酸塩水和物)投与中の患者における,生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時の抗凝固作用の中和」を効果又は効能とし,2022年3月に製造販売承認された.用法および用量は,第Xa因子阻害薬の種類,用量および最終投与からの経過時間に応じて2種類のレジメンがある.非臨床試験ではブタまたはウサギの出血モデルにおいて,第Xa因子阻害薬によって惹起された出血をアンデキサネット アルファが有意に抑制することが確認された.日本人を対象とした臨床試験としては2試験が実施された.日本人を対象に含み海外で実施された第Ⅱ相試験(16-508試験)では,第Xa因子阻害薬を定常状態まで投与した健康成人を対象に,第Xa因子阻害薬の抗凝固作用に対する中和効果が示され,安全性も確認された.国際共同第Ⅲb/Ⅳ相試験(ANNEXA-4試験)では,第Xa因子阻害薬による治療中に急性大出血を発現した患者を対象に,第Xa因子阻害薬の抗凝固作用に対する中和効果および止血効果が検証され,安全性も確認された.ANNEXA-4試験の日本人集団におけるサブグループ解析の結果,日本人集団は全体集団に比して少数例であったが,有効性と安全性は全体集団と類似していた.アンデキサネット アルファは,本邦で初めて承認された第Xa因子阻害薬中和薬であり,今後第Xa因子阻害薬による抗凝固療法中の生命を脅かす出血に対して,迅速に抗凝固作用を中和することで,患者の予後に貢献することが期待される.

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