創薬における薬理実験や薬物動態実験の重要性は言うまでもなく,多くの企業・団体において実験動物を用いた基礎研究が活発に行われてきた.実験動物は,ヒトと同じく各種臓器が一個体として配置され,それぞれが血管で結び付けられ,各種神経支配によりそれぞれの生体活動が巧みに制御されていることから,ヒトを模倣した実験材料として創薬過程において極めて有益な情報をもたらすものである.一方で,これまでの数多くの研究からヒトと実験動物の間には,場合によっては大きな種差が存在することも明らかとなってきており,動物を使った実験にも限界があることも周知の事実である.やはり,ヒトと同じシステムで実験を行うこと,それは臨床試験そのものであることは言うまでもない.創薬の過程において,如何にして臨床試験まで漕ぎつけ成功確率を上げることができるか,多くの企業がこの命題に取り組んできた.
非臨床試験においてヒトとの種差を克服すべく様々な取り組みが為されてきている.今回,創薬の過程においてヒトとの種差を埋める一つの手段としてのヒト新鮮組織の利活用を題材として取り上げ,その有用性を限界も含めて議論することで,近未来の創薬へ貢献できる道を議論した.
2024年8月