日本薬理学雑誌
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チソツマブ ベドチン(遺伝子組換え)(テブダック®点滴静注用40 mg)の薬理学的特性と再発又は遠隔転移を有する子宮頸がんの臨床試験成績
金子 豊加峰 弘毅穴澤 嘉雄
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ジャーナル オープンアクセス 早期公開

論文ID: 24110

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抄録

再発又は遠隔転移を有する子宮頸がんに対する治療は,一次治療から標準治療として免疫チェックポイント阻害薬も使用されるようになり,新たな時代を迎えている.しかし,この治療環境の変化に対応可能な二次治療以降の治療薬は不足しており,新規の作用機序を有する治療薬の開発が求められている.チソツマブ ベドチン(遺伝子組換え)は,抗ヒト組織因子(TF)モノクローナル抗体(IgG1κ)であるチソツマブと,微小管阻害薬モノメチルアウリスタチンE(MMAE)及びバリン-シトルリン構造のリンカーから構成される抗体薬物複合体(ADC)である.腫瘍細胞内のプロテアーゼでリンカーが切断されると,MMAEが遊離し,微小管ネットワークの破壊を介して,細胞周期の停止及びアポトーシスを誘導する.非臨床試験では,チソツマブ ベドチンの濃度依存的な細胞傷害活性及び抗腫瘍活性が確認された.また,チソツマブ ベドチンは抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を媒介する.チソツマブ ベドチンの国際共同第Ⅲ相試験[SGNTV-003(innovaTV 301)試験]では,再発又は遠隔転移を有する子宮頸がん患者において,二次治療又は三次治療としてのチソツマブ ベドチンは治験担当医師が選択した化学療法に比べて,高い有効性が認められた.また,特徴的な有害事象として眼障害が発現するものの,チソツマブ ベドチンの安全性プロファイルは全般的に管理可能であった.SGNTV-003(innovaTV 301)試験の日本人集団を対象とした解析結果は全体集団と一貫していた.これらの成績に基づき,チソツマブ ベドチンは,「がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸癌」を効能又は効果として日本において2025年3月に承認を取得した.

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