日本薬理学雑誌
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実験的ラット肝臓の虚血―再循環モデルにおける肝障害
第2報:再循環の時間経過と肝障害の程度との関係
江頭 亨工藤 欣邦村山 文枝後藤 信一郎河野 俊郎高山 房子山中 康光
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1992 年 100 巻 5 号 p. 445-451

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抄録

ラット肝の虚血―再循環による実験的肝障害の病態モデルを用い,再循環の時間経過と肝障害の程度を生化学的および病理学的に検討した.30分間の虚血後,再循環で高値を示していたLDH値は時間の経過とともに減少したが,GOTおよびGPT値は再循環とともに増加し,12時間後に最高値を示し,その後回復した.また,脂質過酸化物(TBA反応物)も再循環3時間頃から増加し続け48時間後にピークを示したが,その後対照値に戻った.一方,肝マイクロソーム膜の酵素であるチトクロムP-450(cyt.P-450)含量およびNADPH cyt.c レダクターゼ活性は再循環の時間経過とともに減少し,12時間後に最低値を示したが,その後増加し,96時間後に回復した.ヘムオキシゲナーゼ活性は反対に再循環の時間経過とともに増加し,12時間後に最大値を示し,その後徐々に低下し対照値に戻った.また,病理組織的にも再循環12時間後に細胞障害が著明であった.この事から,この虚血―再循環モデルでは過酸化脂質の増加が見られる再循環3時間頃から細胞障害が惹起され,12時間頃をピークとし,その後回復するものと思われる.また,この肝の虚血―再循環モデルは活性酸素種による肝障害の病態モデルであり,種々の肝庇護剤の開発に最適なモデルと思われる.

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