日本薬理学雑誌
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新規カルシウム拮抗薬,塩酸palonidipine(TC-81)の冠血管に対する作用
岡宮 芳明岸本 直青木 久美子砂川 清崇保科 憲二竹下 徹
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1993 年 102 巻 1 号 p. 23-33

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抄録

新規Ca拮抗薬,塩酸palonidipine[TC-81:(±)-3-(benzylmethylamino)-2,2-dimethylpropyl methyl 4-(2-fluoro-5-nitrophenyl)-1,4-dihydro-2,6-dimethyl-3,5-pyridinedicarboxylatehydrochloride]の冠血管に対する作用について,イヌを用いて検討した.TC-81は摘出イヌ冠動脈標本のK収縮に対し,弛緩反応が最大に達するまでの時間が長く(緩徐)また強い弛緩作用を示した.その作用はニカルジピンとほぼ同等,ニフェジピンの約7倍,ジルチアゼムの約1000倍高活性であった.麻酔開胸犬を用いた静脈内投与試験で,TC-81はニフェジピンおよびニカルジピンと同様,1μg/kg以上の投与量で,用量依存的に冠動脈血流量を増加させた.その活性はニフェジピンおよびニカルジピンとほぼ同等であったが,作用がピークに達するのが遅く(緩徐)持続的であった.無麻酔犬を用いた経口投与試験で,TC-81(0.1,0.2mg/kg)およびニフェジピン(1,2mg/kg)は,冠動脈血流量を増加させた.またその作用はTC-81の方がニフェジピンに比し約10倍高活性であり持続的であった.以上の結果より,TC-81は冠動脈血流量増加作用を有することから,狭心症発作時の心筋の酸素需給バランスの異常を改善する可能性が示唆され,狭心症に対し有用であると考えられた.さらにその作用はニフェジピンに比し緩徐で持続的な特徴を有し,服用回数を1~2回/日にできる可能性があり狭心症患者のコンプライアンスを軽減出来ると考えられた.

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