日本薬理学雑誌
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拘束水浸ストレスおよびアスピリンによるラット胃粘液の変動に対するKW-5805の作用
小坂 信夫田中 洪石井 昭男周藤 勝一
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1994 年 104 巻 4 号 p. 293-302

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抄録

実験潰瘍モデルの胃粘液量の変動に対するKW-5805の作用を検討した.ストレス負荷ラットでは,ストレス負荷1時間から3時間に延ばすと,胃粘膜被覆粘液量は減少し,潰瘍は悪化した.KW-5805は,ストレス負荷3時間での胃粘膜被覆粘液量の減少を3mg/kg,p.o.から用量依存的に抑制し,潰瘍形成を10および30mg/kg,p.o.で有意に抑制した.アスピリン投与ラットでは,アスピリン投与後3時間まで胃粘膜被覆粘液量は減少し,投与後4時間以降では回復を示したが,潰癌は投与後1時間から形成し,6時間まで持続した.また,胃粘膜糖タンパク質量(ヘキソース量およびヘキソサミン量)もアスピリン投与後3時間で減少した.KW-5805は,アスピリン投与後3時間での胃粘膜被覆粘液量の減少および潰瘍形成を3mg/kg,p.o.から用量依存的に抑制した.胃粘膜糖タンパク質量の減少に対しても30mg/kg,p.o.で有意に抑制し,ヘキソース量では53%,ヘキソサミン量では68%の抑制率を示した.正常動物において,KW-5805は,経口投与後30分で,3mg/kgから用量依存的に胃粘膜被覆粘液量を増加し,30mg/kg投与群では対照群の1.5倍の増加を示した.KW-5805の胃粘膜被覆粘液量に対する作用は,ピレンゼピンおよびセトラキサートに比べ強活性であった.また,KW-5805の30mg/kg経口投与群は,投与後1時間で胃粘膜粘液糖タンパク質量を有意に増加した.以上の結果から,胃粘液量の減少が潰瘍の成因の一つであり,KW-5805は胃粘液量を増加することによって,潰瘍形成を抑制することが示唆された.

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