日本薬理学雑誌
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ラットにおける実験的低酸素および低酸素-再酸素化モデルの全身臓器への影響
鹿児島 正豊津端 由佳里島田 英世
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1995 年 106 巻 2 号 p. 85-97

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抄録

低酸素血症は,呼吸不全,大手術,熱傷等に合併して起こる消化管粘膜障害の原因とされているが,その発生機序はいまだ不明な点が多い.今回我々は,レスピレーターを用いた安定なラット低酸素血症モデルの作製,さらには全身的な低酸素-再酸素化モデルへ応用することを目的として,分時呼吸回数,一回換気量などの基礎的検討を行った.次に,脳下垂体,副腎,心臓,胃,腎臓への低酸素負荷あるいは再酸素化の影響をMasson's trichrome染色法PAS染色法を用いて組織学的に,また,臨床で低酸素血症の患者に上昇が見られるとされる血漿中GPT(glutamic pyruvic transaminase)活性の測定により生化学的に検討した.さらに,脳下垂体,副腎については臓器重量の測定も合わせて行った.その結果,レスピレーターを用いた低酸素あるいは低酸素-再酸素化モデルとしては,体重220~240gのラットを用い,呼吸回数80回/分,換気量1.5ml/stroke,吸気内酸素濃度14%が適していることが示唆され,この条件では動脈血中酸素分圧量(PaO2)が低下あるいは上昇しても動脈血中二酸化炭素分圧量(PaCO2),動脈血中pHに大きな変化がなかったことより,本モデルは,様々な低酸素血症の病態の中でも,特に環境性の低酸素血症を誘発させるものであると考えられた.GPT活性は低酸素負荷により対照群と比較して有意な上昇を示したが,再酸素化の影響は顕著には反映しなかった.脳下垂体,副腎の臓器重量は,対照群と比較し,3時間の低酸素負荷において有意に増加したが,6時間の低酸素負荷あるいは低酸素-再酸素化では上昇傾向は認められたものの,有意な差は認められなかった.しかし,副腎,脳下垂体は組織学的に傷害が最も重度であり,低酸素あるいは再酸素化の影響を顕著に受けたことが認められた.

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