日本薬理学雑誌
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ニワトリ胚子大脳培養細胞でのNO合成酵素の発現に及ぼすエタノールの影響
森 千嘉子夏木 令子
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1996 年 107 巻 4 号 p. 197-203

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抄録

工タノールのNO合成酵素(NOS)活性に及ぼす影響について,ニワトリ胚子大脳培養細胞を用いて,組織学的,生化学的に検討した.培養細胞は,ホワイトレグホン受精卵の胚形成期3日目に10%工タノールを肺胞に投与し(工タノール群),一方では,生理的食塩液を投与(対照群)した13~14日齢の胚子から,大脳細胞を遊離し,常法に従い培養した.培養細胞における,NADPHジアホラーゼの発現は,ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)を用いる染色法で行った.次いで,NOSの活性測定として,NBTを基質とし,NADPHを補酵素とするNADPHジアホラーゼ活性を測定した.また,[3H]アルギニンから[3H]シトルリンへの変換量(NOS活性)を測定し,NOS活性とした.1胚子大脳より,3~4×106個の遊離細胞が得られ,その生存率は97%以上で,対照群,工タノール群ともに差はなかった.培養細胞の染色において,NADPHジアホラーゼ陽性の神経は,培養3日目頃から両群に観察されたが,顕微鏡下における肉眼では,その染色度合いは,両群間に差はなかった.次いで,NADPHジアホラーゼ活性,NOS活性は,遊離細胞において,工タノール群の方が対照群より有意に高い活性を示した.培養細胞において,NADPHジアホラーゼ活性は,培養4日目から工タノール群の方が対照群より有意に高い活性を示し,一方,NOS活性は,培養2日目から工タノール群の方が対照群より有意に高い活性を示した.以上,慢性エタノールによる,NADPHジアホラーゼおよびNOSの活性化および誘導により放出されるNOが,神経細胞障害に関与していることが推察された.

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