日本薬理学雑誌
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ラット白血球機能に対する局所麻酔薬の影響
河野 元一
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1999 年 113 巻 6 号 p. 357-366

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抄録

局所麻酔薬は抜歯あるいは小手術時に頻繁に使用されるなど歯科臨床において幅広く用いられている薬剤であるが,近年,好中球の機能に様々な影響を与えることが示されている.好中球やマクロファージなどの貧食細胞は感染初期の非特異的な免疫機構において重要な機能的役割を演じることから,この好中球の機能抑制が局所麻酔薬使用時の細菌感染発生の少なくとも一部に関与する可能性は十分に考えられる.本研究では,マクロファージの遊走能,およびスーパーオキサイド産生能に及ぼす局所麻酔薬の影響について検討した.局所麻酔薬として塩酸リドカイン,塩酸メビバカイン,塩酸プロピトカイン,塩酸プロカイン,および塩酸テトラカインの5種類を用いた.塩酸リドカイン,塩酸メビバカイン,塩酸プロピトカイン,および塩酸テトラカインでは0.1および1mg/m1濃度の添加においてマクロファージ遊走能およびスーパーオキサイド産生能をともに有意に抑制した(P<0.05).これに対して,塩酸プロカイン0.1mg/m1濃度の添加では遊走能およびスーパーオキサイド産生能に有意な抑制は認められなかったが,1mg/m1添加では他の局所麻酔薬と同様,遊走能およびスーパーオキサイド産生能を有意に抑制した.なお,塩酸リドカイン前処理によるスーパーオキサイド産生能抑制は可逆的な抑制であるのに対して,一方,塩酸メビバカイン,塩酸プロピトカイン,塩酸プロカイン,あるいは塩酸テトラカインで前処理した場合には,いずれもスーパーオキサイド産生能を有意に抑制した(P≤0.05).本研究成績から,今回用いた局所麻酔薬は臨床適応濃度でマクロファージの遊走能およびスーパーオキサイド産生能をいずれも抑制することが明らかとなった.

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