日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
敗血症性多臓器機能障害におけるストレス応答
ストレスと細胞応答
高橋 徹鈴木 勉山崎 晶築地 崇平川 方久赤木 玲子
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 114 巻 5 号 p. 295-302

詳細
抄録

近年,敗血症は感染に対して全身的な炎症反応が亢進している状態(systemic inflammatory responsive syndrome: SIRS)として捉えることが提唱され,過剰な炎症反応にによるOxidative Stressが細胞を傷害し敗血症性多臓器機能障害(septic multiple organ dysfunction syndrome: Septic MODS)に陥ると考えられている.ヘム分解の律速酵素であるheme oxygenase-1(HO-1)はその遺伝子解析より熱ショックタンパク32としても知られており,基質であるヘムのみならず虚血再灌流等の酸化ストレスやIL-6によって細胞内に誘導される.筆者らはlipopolysaccharide(LPS)をラットに投与することにより血中IL-6の上昇を伴うSeptic MODSモデルを作成しHO-1の動態とその意義について検討した.LPS投与後時間経過は異なっていたが,肝,肺,腎でHO-1 mRNAの発現が認められ,肝ではそれに先立って細胞内遊離ヘムの上昇が認められ,肝HO-1 mRNAの誘導にはLPSにより障害されたヘムタンパクより遊離したヘムが関与し,誘導されたHO-1はpro-oxidantである細胞内遊離ヘムを分解することにより肝保護的に働くことが示唆された.敗血症による障害の著しい肺のHO活性を特異的拮抗阻害薬Snmesoporphyrinで阻害するとLPSによる肺障害の悪化が見られたことから,HO-1は生体防御的に働くと考えられた.さらに白血球中のHO-1 mRNAの発現がLPS投与早期(3時間)にIL-6レベルの上昇に一致して増加したことからHO-1が敗血症の新しい病態マーカーの候補となる可能性が考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top