日本薬理学雑誌
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低カルシウム飼料飼育ラットの骨強度低下に対するビタミンK2(メナテトレノン)の効果
富宇賀 孝秋山 康博小林 正敏原 久仁子川島 英敏
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1999 年 114 巻 5 号 p. 303-313

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抄録

Sprague-Dawley系4週齢雄性ラットを用いて2つの実験を行った.実験1ではカルシウム(Ca)不足による骨量減少病態の作製を検討した.ラットを0.05,0.1,0.2,0.5および1.16% Ca含有飼料で3週間飼育することにより,飼料中のCa量の低下に対応した大腿骨乾燥重量の低下が認められた.0.05および0.1% Ca群では1.16% Ca群に比して体重,骨長,血漿中Ca値の低下と血漿中アルカリホスファターゼ活性の上昇が観察されたが,他の群ではこれらの項目の変化は認められなかった.すなわち,体重および血漿中成分に影響を与えず,骨量を減少できる飼料中Ca量として0.2%が適量であることが明らかとなった.実験2では低Caラットでの骨強度低下に対するビタミンK2(メナテトレノン,V.K2)の効果を検討した.ラットを0.2% Ca飼料で3週間飼育し,さらに3または6週間これらのラットを0.2または0.5% Ca飼料で飼育し,同時にV.K2を混餌投与した.0.2% Ca群の大腿骨および腰椎の骨塩量,骨密度は0.5% Caで飼育した同週齢正常群に比し3および6週後いずれも有意の低値を示し,0.2%から0.5%に飼料中Caを回復させた群ではいずれの項目も経時的に急速に上昇した.また,大腿骨3点曲げ試験および腰椎圧縮試験による骨強度も骨密度と同様の変化を示した.この病態に対するV.K2の効果は大腿骨においては骨塩量,骨密度および骨強度のいずれも認められなかったが,腰椎では0.5% Ca V.K2 3週投与群および0.2% CaV.K2 6週間投与群のいずれも圧縮強度の有意な改善を示した.0.5% Ca回復群6週後の腰椎の骨塩量と投影面積に対してもV.K2群は改善傾向を示した.以上の結果よりV.K2は椎体の骨強度に対し有用な作用を持つことが示唆された.

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