1954 年 50 巻 6 号 p. 495-501,en41
種々なFlavone化合物の藥理學的作用に就ては, 1927年より數年聞に渉り福田教授一門の入々1) (輻田, 河野, 赤松, 椎名, 村尾, 富士川) により詳細に報告せられて居り, 其の後小池2) は利尿作用に就て, v.Jeney, Czimmer, Mekes3) 等は循環器系に野する作用に就て報告して居るが, それ以後FIavone化合物に對する藥理學的研究は餘り省りみられなかつた.
然るに1944年Griffith, Couch & Lindauer4) 等はFlavone配糖體の一つであるRutinはVitamin Pの本態であるHesperidinと化學的に近似しているばかりでなく, capillary stabilizerとして同様な作用を有する事を明かにし, 更にShanno5) により此の點が確認されるに至り, 爾來動物實驗或は臨牀的に廣く檢討が加えられた.然し之等の多くはFlavone化合物のcapillary stabilizerとしての作用に關したものであり, 系統的に藥理學的作用を檢したものは尠い.加藤6) はRutin, Quercetinに就て福田教授一門の業績を追試すると共にcapillary stabilizeτとしての作用も比較檢索している.
然し多くのFlavone化合物は水に難溶であり, 特別の溶剤を以て溶液とし臨牀並びに實驗に用いられておるが, 最近卯尾田は落葉松からQuercetinの還元型物質を抽出, 之をLarixinと命名した.本物質は化學的にDihydroquercetinで氷溶性であり, 然も坂本7), 山崎8) は中村G指導の下に本物質が局所適用或は静脈注射によつてArthus現象を抑制し, 血管を強化する事を朗かにしている.
然し乍ら本物質の々な藥理學的作用に關しては全く報告がない.
茲に於て私は本物質の藥理學的作用を檢し, 二, 三の點ではRutinとの比較も試みたので其の結果を報告する.