日本薬理学雑誌
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イヌ股動脈条片における薬物の作用
守下 秀治古川 達雄
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1974 年 70 巻 4 号 p. 523-530

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抄録

イヌ股動脈条片について,その一般的性質を吟味し,さらに諸種薬物の作用を検討した.1)イヌ股動脈条片は固有緊張を保持し,自発性の律動的収縮を示さない.等張性に記録して,条片に49の負荷をかけると,条片は徐々に伸長して,指数函数的曲線を描き,その緊張は1.5~3時間でほぼ一定となる.収縮剤の作用はそれに伴って強く現われるようになり,反応性は1.5~3時間で最大となり,その後は7時間位まで一定である.2)Adrenaline,noradrenaline,dopamine,tyramine,ephedrineはこの順序の作用強度で,すぺて収縮を起こし,その収縮はphenoxybenzamineで完全に除かれる.isoprenalineは低濃度では弛緩,高濃度では収縮を起こし,弛緩はpropranolo1で,収縮はphenoxybenzamineで完全:に除去される.3)Acetylcholineはいかなる濃度でも弛緩を起こし,この作用はatropineと拮抗する.KClは強い収縮,histamineは弱い収縮を示す.以上のように,イヌ股動脈条片はウサギ大動脈条片に比べ,収縮作用のみでなく,弛緩作用も現われ,その反応性は生体における薬物の作用にきわめて類似している,したがって,薬物の血管に対する作用を検討するのに適した実験材料と考えられる.

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