日本薬理学雑誌
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生体内消失の早い薬物についての薬物依存性の研究
柳浦 才三田頭 栄治郎泉 知子
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1975 年 71 巻 4 号 p. 329-337

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抄録

ラットを用いたpethidineの薬物依存性試験は従来からmorphineあるいはcodeineにみられた1日2~3回の適用スケジュールでは十分な依存獲得は不可能であった,Pethidineのごとく生体内からの消失が早く,しかも作用の弱い薬物の依存牲試験は生体に常時薬物が存在する条件下ではじめて可能であることを示唆し,非経口的持続注入法ではじめて成功している.本実験は著者らが従来より簡易な依存性のスクリーニング法として用いている被検薬物を飼料中に混入してラットに連続摂取させる方法でpethidineの依存性試験を行なった結果,次の成績を得た.1)Pethidine混入飼料(0.5mg/g vs.1mg/g of food)を7週間連続自由摂取させると,3週間目頃から自発的に高濃度側(1mg/g)の飼料摂取率が漸増した.またこの時期に48時間休薬しても体重の減少はみられなかった.2)初期3日間2mg/g of food,その後7日間4mg/gの混入飼料を摂取させたのち48時間休薬すると,24時間後には体重の減少がみられたが,48時間後にはすでに休薬前のレベルに回復した.3)休薬24時間内の体重および飼料摂取量の経時変化をみると体重は12~13時間後に,また飼料摂取量は6時間後に最大減少を示したのち漸次回復した.4)Pethidine休薬13時間後にmorphine(10mg/kg,s.c.)を単一適用すると一過性の禁断症状抑制がみられた.5)Pethidine依存ラット(平均300mg/kg/day)にM混入飼料を24時間連続摂取させる(62.9mg/kg/24hr)と禁断症状は完全に抑制された.6)Levallorphan(5mg/kg,s.c.)を適用するとmorphine同様に著明な体重減少と禁断症状が観察された.これらの成績からPethidineの依存形成能はmorphineの約1/5程度と考えられる.結論としてPethidineにみられたような生体内消失の早く,作用も弱い薬物の依存性試験には薬物混入飼料法は有用であり,検定にあたっては休薬後24時間以内の体重および飼料摂取量の経時変化を測定することが一層重視される結果を得た.

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