日本薬理学雑誌
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Morphineの依存と嗜好性(III)MorphineとCocaineの併用による自発的薬物摂取の強化効果および交差自発的摂取試験
柳浦 才三田頭 栄治郎
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1975 年 71 巻 7 号 p. 663-673

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抄録

Morphine(M)とcocaine(Coc)を同一飼料中に混入して3週間連続自由摂取させた後のMおよびCocの自発的摂取行動の強化効果を検索し,次にM依存ラットにCocあるいはcodeine(Cod)を,また逆にCoc依存ラットにMをそれぞれ自発的摂取させた交差自発的摂取能を検討した.その結果,次の成績を得た.1)MとCocを併用して適用すると,適用期間中にはM+Cocそのものの自発的摂取率は増加しなかったが,その後M vs.普通飼料(NF)およびCoc vs.NFに置換えてMおよびCocの自発的摂取率を測定すると,それぞれ単独適用後の摂i取率に比較して著明な増加がみられた.2)M依存ラットのCoc自発的摂取率は初期にはCoc依存ラットにみられた摂取率と同程度でありCocとMとの交差自発的摂取はみられたが,Mの禁断症状を経験するにしたがいCoc摂取率は漸次減少していき,Coc摂取がpunishmentとしての効果をもった.3)Coc依存ラットのM摂取率はM依存ラットと同様の摂取パターンを示し,漸次増加の傾向を示した.しかし全体的にCoc依存ラットの方が低い摂取率を維持していた.4)M依存ラットにはcodeine(Cod)vs.quinine(Q)vs.NF条件下でのCod自発的摂取の強化効果はみられなかった.5)Cocの代わりにQをMと併用した場合,MおよびQの自発的摂取率はそれぞれを単独適用した場合と変らず併用効果はみられなかった,6)Coc経口適用によるラットのLD50値は281mg/kgであり,皮下適用時の250mg/kgに比較し,わずかに効果は弱かったが作用発現時間および症状がほぼ同じであった.以上の結果よりMとCocの併用はMおよびCoc自発的摂取行動を強化し,Coc混入飼料の味覚がsecondary reinforcementとして作用するのではなく,薬物摂取行動の決定はラットと薬物がもつ薬理作用との相互反応にもとつく現象と考える.

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