日本薬理学雑誌
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駆虫薬に関する基礎的研究(第26報) ―豚回虫に対する4-Iodothymolの生化学的薬理作用―
谷澤 久之寺田 護渡辺 芳則
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1976 年 72 巻 5 号 p. 493-499

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抄録

豚回虫筋の糖質代謝に対する4-Iodothymol(IT)の作用を,hexylresorcinol(Hex),santonin(S)およびpiperazine(Pip)との比較のもとに検討し,以下の結果を得た.1)Hex(200~400μg/y)は回虫筋ホモジネートでのsuccinate生成,細胞質におけるphosphofructokinase(PFK)活性およびミトコンドリアにおける電子伝達活性を,強力にかつ非特異的に阻害した.2)S(100~400μg/ml)およびPip(100~400μg/ml)はこれらの活性に対しほとんど影響を与えなかった.3)IT(100~400μg/ml)はホモジネートでのsuccinate生成を著しく阻害した.4)IT(400μg/ml)によるPFKに対する阻害作用はHex(400μg/yl)の場合に比べ約1/3であった.5)ITはミトコンドリアにおけるsuccinate oxidasc系の電子伝達を阻害した.ITの低濃度(25~100μg/y)ではsuccinate dehydrogenase(SDH,FP2)-cytochrome(cyt.)b間,また高濃度(200~400μg/ml)ではSDHに対する阻害が推定された.これらの結果から,ITは回虫筋ミトコンドリアにおけるエネルギー代謝を阻害することにより回虫を死に導くものと考えられる.

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