日本薬理学雑誌
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新しい抗うつ剤Lopramineの行動薬理学的研究
植木 昭和藤原 道弘井上 和秀
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1976 年 72 巻 5 号 p. 585-607

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抄録

新しい三環性抗うつ薬lopramine(Leo640,DB-2182):N-methyl-N-(4-chlorobenzoylmethyl-3-(10,11-dihydro-5H-dibenz(b.f)azepin-5-yl)-propylamine hydrochlorideの行動薬理学的特性を,マウス,ラットを用いて検討し,imipramine,amitriptylineのそれと比較した.lopramine(LOP)は0.5%CMCに懸濁し,imipraminc(IMP),amitriptyline(AMT)は精製水に溶解し,特記しない限りは経口投与した.LOPはIMP,AMTと同様reserpine hypothermia,tetrabenazine ptosis,halopcridol catalepsyに拮抗し,methamphetamine,DOPAおよびapomorphineによる常同行動を増強する抗うつ薬としての薬理学的特性を有する.その他,LOPは中隔野破壊や嗅球摘出ラットの情動過多をIMP,AMTと同程度に抑制した.とくにmuricideは選択的に抑制され,嗅球摘出ラットのmuricide抑制作用のED50はLOP24,0,IMP39,0,AMT27.5mg/kgであった.一方Δ9-tetrahydrocannabinolによって起こるmuricide抑制作用のED50はLOP30.0,IMP14.5,AMT20mg/kg i.P.であった.LOPはIMP,AMTとは異なり5000mg/kgの大量でも軽度の鎮静を示す程度であり,―般活動性の増加およびmethamphetamine運動興奮の増強作用はIMP,AMTよりも強かった.またphysostigmineの致死作用やoxotremorine tremorを全く抑制しないので,LOPは中枢性抗コリン作用を欠くものと思われる.その他,5000mg/kgの大量でも協調運動障害や筋弛緩はみられず,死亡することもなかった.以上,LOPはIMPAMTに比べて一般活動性の増加,methamphetamine運動興奮の増強が強く,中枢性抗コリン作用はなく,しかも毒性の極めて少ない抗うつ薬と考えられる.

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