日本薬理学雑誌
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ラット脳におけるNorepinephrine・Dopamine代謝に対するMethamphetamineならびにReserpine類似薬併用下でのLithium塩の作用
野津 隆司古川 達雄
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1976 年 72 巻 6 号 p. 715-723

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抄録

Lithium(Li)塩の躁うつ病治療における作用機作検索のため,薬物による異常状態下でのLiの作用について,行動薬理および脳内catecholamine代謝の両面から検討した.Open-field法による自発運動量測定の結果,methamphetamine(MAPT)のambulationおよびrearing増加作用に対し,lithium chloride(LiCl)は急性投与(2.4mEq/kg)で抑制効果を示した.しかしLiClの亜急性投与(2.5mEq/kg×2/日,4.5日)後MAPTを投与すると,stereotypeの円周運動を生じてambulationの異常尤進がみられた.またreserpine類似薬(Ro4-1284)による自発運動減少に対し,LiCl急性投与では影響を与えなかったが,LiClの亜急性投与後Ro4-1284を投与すると,Ro4-1284投与短時間後の一過性の運動冗進は消失し,また241時間後の回復が促進される傾向が認められた.他方,LiCl亜急性投与後薬物を併用して,脳内のnorepinephrine(NE)・dopamine(DA)代謝を検討した.MAPTによるDA代謝変化に対してLiは有意な作用を現わさなかったが,NE代謝変化に対しては脱アミノ体の減少を抑制し,O-メチル脱アミノ体の減少も抑制する傾向を示した.またRo4-1284によるNE代謝変化に対してはLiは有意な作用を示さなかったが,DA代謝ではDAの減少を抑制した。従ってLiはMAPTならびにreserpine類似薬による行動ならびにNE・DA代謝変化に対してある程度拮抗し,この作用が1,iの躁うつ両相に対する治療効果の機作になんらかの関連を有するものと思われる.

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