日本薬理学雑誌
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Schedule-induced polydipsiaを利用したラットの飲水行動からみた甘味料の効果
奥泉 清子栗原 久小川 治克田所 作太郎
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1977 年 73 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

定時間隔食餌強化スケジュール(FI 90秒)の下でラットにレバーを押させ間欠的に食餌錠を獲得せしめると,摂餌後その都度post-pellet licking burstと呼ばれるはげしい飲水を繰り返し,schedule-induced polydipsiaの状態となる.充分に訓練するとレバー押し及び飲水行動は一定する.このように訓練した5匹の成熟雄ラットを用い,1セッション2時間とし,水道水からいろいろの濃度の甘味料(蔗糖,saccharin,aspartameおよびNa cyclamate)溶液あるいは食塩溶液に置換した時の影響を,飲水口への口づけ回数およびレバー押し数(FL-反応)の変化を指標として追及した.0.3,1.0,4.0及び16%の蔗糖液置換後20分間の口づけ回数は濃度に比例して増加し,この時のFI‐反応は16%の場合のみ著明に抑制された.0.3~4.0%溶液ではその後2時間にわたり口づけ回数の増加が維持されたが,FI‐反応には著変が認められなかった.しかし16%溶液ではその後急激かつ著明な口づけ行動の抑制が生じ,FI‐反応も抑制される傾向を示した.0.03,0.1,0.4及び1.6%saccharin溶液では,1.6%を除き濃度とは関係なくすべて口づけ回数及び溶液総摂取量の増加が生じた.しかし1.6%は有意に忌避された.FI‐反応にはすべての濃度で変化が認められなかった.0.1~0.8%のaspartame溶液ではいずれも水道水の場合に比し著変がなく,ラットが水道水との識別を行なっているとは思えなかった.Cyclamate溶液の場合0.05~0.2%ではいずれの行動も変化を示さなかったが,0.4%になると忌避する傾向が生じた.食塩水0.8%以下ではいずれも変化がなかったが,1.6%の場合口づけ回数は著明に抑制された.しかしFI‐反応には変化がなかった.すなわち甘味に対するラットの嗜好はヒトの場合とかなり異なることが推測されるので,人工甘味料の薬理学的,中毒学的検討にはラットの嗜好特性を十分考慮する必要があろう.

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