日本薬理学雑誌
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2-(5H-[1]Benzopyrano[2,3-b]pyridin-7-yl)propionic acid(Y-8004)の薬理学的研究(第III報)a) ―抗炎症薬との相互作用―
丸山 裕今吉 朋憲後藤 一洋角部 行信
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1977 年 73 巻 1 号 p. 113-122

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抄録

非ステロイド性抗炎症薬と類似した薬理作用を有する2-(5H-[1]benzopyrano[2,3-b]pyridin-7-yl)propionic acid(Y-8004)について,既知抗炎症薬との併用効果を検討した.ステロイド性抗炎症薬hydrocortisone(HD)との併用で,Y-8004はラットcarragcenin足浮腫およびadjuvant関節炎に対する治療実験において協力作用を示し,indomethacin(IM)をはじめとする既知非ステロイド性抗炎症薬と同様の性質を示した.またadjuvant関節炎に対して,Y-8004はprednisolone治療後の継続代替投与によってもIMと同様にprednisoloneの効果を維持した.一方,非ステロイド性抗炎症薬acetylsalicylic acid(AS)との併用では,その配合比率がAS:Y-8004=25:1の場合,抗carrageenin浮腫作用は拮抗的に弱められたが,Y-8004の配合比率が1/50,1/100と減少するにつれて併用効果は相加あるいは協力的に強められた.同様の傾向はY-8004とIM間でも認められた.また,Y-8004はPBとの併用で相加的に作用し,ASあるいはPBと拮抗的に作用するIMとは若干異なる性質を示した.ラットを用いたY-8004の急性毒性はASあるいはHDとの併用で強められた.しかし,IMの急性毒性はASとの併用で抗carrageenin浮腫作用の場合と同様に拮抗的に弱められ,HDとの併用ではほとんど影響を受けなかった.これらの成績から,Y-8004にステロイド性抗炎症薬の節減および離脱療法の可能性が示唆される.一方,非ステロイド性抗炎症薬の併用では拮抗作用が認められ,臨床評価との関係は明確でないが,今後留意すべき点と考えられる.

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