日本薬理学雑誌
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Ephedrineの血圧反転機序(第2報)
斉藤 晴夫
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1977 年 73 巻 1 号 p. 83-92

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抄録

前報においてl-ephedrine(l-EPH)前処置後d-ephedrine(d-EPH)投与により血圧反転を示すが,この際生体内遊離物質として5-HTが介在することを推測し血圧反転機序を明らかにした.d-EPHの血圧反転はchlorpromazine,sulpiride,LSD-25の前処理によって消失したが,cocaineおよびPCPA前処理,迷走神経切断およびspinalラットでは消失しなかった.これらの結果は対照として比較した外因性5-HTの血圧下降の消失と全く一致した.Li2CO3処理ラットにおいては,d-EPHと外因性5-HTの相対的な血圧下降は,controlラットに比べ約4倍に増大した.またL-tryptophaneの大量投与ラットおよびMAOIのiproniazid併用投与ラットにおいて,d-EPHの血圧下降は明らかに増加した.一方d-EPHの血圧反転時の血中5-HTは有意に増加し,l-およびd-EPHによるin vitroにおける血小板からの遊離が認められ,この遊離は比較的短時間に発現した.Reserpineにより間接的昇圧作用が消失したラットにおいて,直接的α-作用はl-EPHがd-EPHより強かった.d-EPHと5-HTおよびl-EPH投与後に再びl-EPHおよびtyramineと5-HTを同時投与した場合l-EPHは血圧上昇を示したが,d-EPHおよびtyramineでは上昇作用が隠蔽され,5-HTの降圧作用が現われた.これらの結果と前報の結果から,血圧反転機序を次のように結論した.1)第1回目のl-EPHの投与によってα-作用が隠蔽され,第2回目投与のd-EPHのα-作用が滅弱する.2)l-EPHの投与によって間接的α-作用が減弱するため,第2回目のd-EPH投与による間接的α-作用は減弱ないしは消失する.3)d-EPHによって血小板から5-HTが遊離する.4)遊離した5-HTの降圧作用が,減弱したd-EPHのα-作用を隠蔽して血圧が下降する.5)この血圧下降にd-EPHの直接的血管拡張作用が関与している.

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