日本薬理学雑誌
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Dobutamineのイヌ呼吸,血圧,および数種血液成分に対する作用
上田 元彦松田 三郎武田 寛
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1977 年 73 巻 5 号 p. 549-556

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抄録

Dobutamine(DOB)の静脈内投与によって麻酔イヌの呼吸運動はほとんど影響されなかったが,収縮期圧の上昇と拡張期圧の下降すなわち脈圧の増大が認められた.しかしisoproterenol(Iso)による著明な血圧下降,epinephrine(Epi),norepinephrine(NE),dopamine(DA)による昇圧作用に比較して軽微であり,DOBの血管系に対する作用は弱い.DOBによる心拍数増加作用はDAとほぼ同等であった.各catecholamineの最高投与量時(Iso 3μg/kg, i.v., Epi 10μg/kg, i.v., NE10μg/kg, i.v., DA300μg/kg, i.v., DOB 300μg/kg, i.v.)に見られた心室性不整脈発現例は,それぞれ1/4,4/4,4/4,2/4,1/4例でDOBの不整脈誘発能はEpi,NE,DAに比べて弱いことを示す.DOBを無麻酔犬に連続注入した場合もDOBの単回投与時同様に,収縮期圧の上昇と拡張期圧の下降(脈圧増大)が認められたが,ISOの著明な血圧下降またはDAの昇圧作用に比べて軽度であった.DOB投与によって心拍数増加が見られたが,Isoの作用に比べて軽度であり,IsoおよびDA投与時に見られた不整脈の発現は認められなかった.Isoによる血清遊離脂肪酸(FFA)の増加と血清Na,Kの減少,DAによる血中glucose,FFAの増加が認められたが,DOBはこれらの血液成分に対して有意な変動をおよぼさなかった.これらの実験成績はDOBの心筋収縮力増強作用に対する選択佐を一部裏付けるものと考えられる.

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