日本薬理学雑誌
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冠動脈結紮によるイヌ心筋の代謝変動におよぼすCarteolol前投与の効果
斉藤 祐一市原 和夫安孫子 保
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1977 年 73 巻 5 号 p. 597-603

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抄録

Carteolol[5-(3-tert-butylamino-2-hydroxy)propoxy-3, 4-dihydrocarbostyril hydrochloride]の虚血心筋glycogen代謝および高エネルギー燐酸化合物の代謝に対する作用を検討した.実験にはpentobarbitalで麻酔した雌雄雑犬を用いた.虚血心筋は生体位にある心臓の左冠動脈前下枝の細い分枝を結紮することによって作製した.対照群としては生理食塩水,carteolol投与群としてはcarteolol 10または100μg/kgを静脈内に投与したイヌの心臓を用いて行なった実験の成績を次に示す,1)対照群(a)正常心筋:Glycogen,glucosc-6-phosphate(G6P),乳酸の各含量およびphosphorylase活性は心筋内層の方が外層よりも高く,phosphocreatine含量は逆に外層の方が高い値を示した.Adenosine triphosphate(ATP)含量は両層の間に差は認められなかった.(b)虚血心筋:冠動脈を結紮するとその初期にglycogen,phosphocreatineの減少,G6P,乳酸の増加およびphosphorylaseの活性化が認められ,特に心筋内層の変化は著しかった.しかしATP含量には大きな変化が認められなかった.2)Carteolol投与群(a)正常心筋:Carteolol 10または100μg/kg投与によってglycogen,G6Pは減少したが,その他は対照群の正常心筋と同様であった.(b)虚血心筋:冠動脈を結紮しても,その初期にはglycogenの減少は認められず,phosphorylase活性もcarteolol 100μg/kgの投与によって完全に抑制されていた.G6Pは結紮によって対照群よりも軽度ではあるが増加し,乳酸も増加が認められた.冠動脈結紮によってphosphocreatineは減少したが,ATPは大きな変化を示さず,carteolol 100μg/kg投与群で結紮時間が長くなると多少減少する傾向があるのみであった.以上の結果から,carteololの前投与でもまたpropranololと同様に冠動脈結紮によって起こる心筋のglycogen分解およびphosphorylaseの活性化を抑制することが明らかになった.

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