日本薬理学雑誌
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各種Pyrogenによる家兎の発熱に対するAcetylsalicylicacidおよびSalicylicacidの解熱機構
伊丹 孝文加納 晴三郎
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1977 年 73 巻 6 号 p. 683-690

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抄録

Aspirin(acetylsalicylic acid, ASA)およびsalicylic acid(SA)の解熱機構をより明らかにする目的で両薬物の可溶化を試み,それらのsodium塩(Na-ASA,Na-AS)を各種pyrogenで発熱せしめた家兎に静注あるいは大槽内投与して,その効果を比較検討し以下の成績を得た.1)0.35mmole/kgのNa-ASA(70mg/kg)またはNa-SA(56mg/kg)を1ipopolysac-charide(LPS,0.2μg/kg,i.v.)で発熱せしめた家兎に静注し,血漿中濃度を測定したところ,ASAの半減期は約7分であり,SAの初期の半減期は約0.7時間であった.2)0.69mmole/kgのNa-ASA(140mg/kg)またはNa-SA(111mg/kg)を正常家兎に静注しても体温に影響を与えなかった.3)Na-ASA(140mg/kg)を発熱家兎(LPS,0.2μg/kg,i.v.)に種々の時間で静注した時,解熱効果の最も著しい場合はLPS投与と同時および2時間後であり,他の場合(1,3時間目)ではその効果は弱かった.4)Na-SA(111mg/kg)を発熱家兎(LPS,0.2μg/kg,i.v.)に種々の時間で静注した時,解熱効果はNa-ASAに比べて弱く,わずかに1,2および3時間後投与に認められた.5)Na-ASAはleucocytic pyrogen(LP,1ml/kg,i.v.)による発熱に対して解熱効果が認められたがNa-SAには認められなかった.6)Na-ASAおよびNa-SAは2,4-dinitrophenol(DNP,20mg/kg,i.m.)による発熱に対しては抑制よりはむしろ増強効果が認められた.7)Na-ASAまたはNa-SAを大槽内に0.0035mmole/kg投与したとき,LPS(0.2μg/kg,i.v.)による発熱に対してNa-ASAのみ著しい効果が認められた.以上の結果からASAおよびSAの解熱機構は前者では主としてLPSの中枢での作用を阻害するものであり,後者では主としてLPの遊離または合成を阻害することに基因すると考えられた.

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