日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
家畜頸動脈の抗原性除去に関する免疫薬理学的研究
旭 哲也福原 道雄長谷川 通規後藤 匡代田中 修一
著者情報
ジャーナル フリー

1977 年 73 巻 8 号 p. 919-929

詳細
抄録

できうる限り抗原性を除去した代用血管を得る目的で,ブタの頸動脈を次記の方法で順次処理した3種の検体を作製し,これらの検体について免疫薬理学的な検討を行なった.検体I;ブタ頸動脈より,付着した脂肪や外部組織を剥離,除去したもの.検体II;検体Iをchymotrypsinを含む処理液で3時間処理したもの.検体III;検体IIを3%glutaraldehydeで14日間固定したもの.この3検体より水溶性蛋白質を抽出,それぞれE-I,E-IIおよびE-IIIとし,これらを抗原としてモルモット,ウサギを感作し,active systemic anaphylaxis,passive systemic anaphylaxis,passive cutaneous anaphylaxis,感作平滑筋の抗原によるcontractionおよびArthus反応などを指標として抗原性の低下を観察した.その結果,E-IとE-IIの間には免疫学的交叉反応が認められ,重層法やゲル内沈降反応でも検体Iと検体IIの間に共通抗原の存在することが確かめられた.E-IIIは上記のすべての実験系で反応を示さなかった.また,ウサギ背部に検体Iを細切して移植し,3および5ヵ月後にE-Iを静注したところ,anaphylactic shockを起こして死亡した.同様にウサギに検体IIIを移植してE-IIIを静注したが,反応は誘発されなかった.以上の成績から,ブタ頸動脈をchymotrypsin処理,3%g1utaraldehyde固定することにより,その抗原性の除去されることが推定された.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top