日本薬理学雑誌
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止瀉剤Loperamideの薬理学的研究(第1報)ヒマシ油ならびにProstaglandin E1誘発下痢に対する効果
荘司 行伸河島 勝良中村 秀雄清水 当尚
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1978 年 74 巻 1 号 p. 145-154

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抄録

ヒマシ油およびprostaglandin E1(PGE1)誘発下痢に対するloperamideの効果を麻薬性鎮痛剤やatropine,mecamylamine,局所麻酔剤の効果と比較検討し,以下の結果を得た.(1)Loperamideは,ヒマシ油経口投与によるラットの下痢に対し強力な止瀉作用を示し,ヒマシ油投与1時間後まで下痢の発現を抑制するED50値は0.082mg/kg p.o.であった.その活性はmecamylamineの1.5倍,methadoneの5.6倍,morphineの7.6倍,atropineの15.2倍,codeineの22.4倍,pethidineの97.9倍であった.一方,Haffner法による鎮痛作用では,loperamideのED50値はラットで149mg/kg p.o.であり,morphineのED50値は32.0mg/kg p.o.であった.止瀉作用の選択性を(鎮痛作用のED50値/止瀉作用のED50値)で表わすと,loperamideの値は1817,morphineの値は51.3であった.(2)ラットのPGE1静注による下痢の発現はloperamideにより抑制された.PGE1下痢に対するloperamideの止瀉活性はヒマシ油下痢に対する止瀉活性と比べて大差を示さなかった.(3)マウスの小腸輸送能を120分にわたり20%以上抑制するloperamideの用量(ID 120min)は0.8mg/kg p.o.であり,この活性はmorphineの9.2倍,methadoneの17倍,codeineの19倍,pethidineの44倍であった.なお,loperamideの作用持続時間はmorphineやmethadone,pethidineよりも長かった.(4)LoperamideのLD50値はラットで249mg/kg p.o.であった.以上の結果からloperamideは強力で持続性の止瀉作用を有し,止瀉作用の発現量と鎮痛作用の発現量あるいは急性致死毒性量との間に大きな用量差を示す薬物であると考えられた.

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