日本薬理学雑誌
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Long-acting phenothiazinesに関する薬理学的検索 特に,Fluphenazine decanoateを中心として
陳 博忠
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1978 年 74 巻 7 号 p. 871-883

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抄録

Phenothiazine系誘導体に属するfluphenazineのdecanic acid esterであるfluphenazine decanoate(FD)の一回皮下投与による薬理作用を中心に検索し,殊に作用発現,持続時間および作用強度等についてfluphenazine enanthate(FE)ならびにfluphenazine・2HCl(FH)と比較検討した.1)マウスの自発運動量に対して,経口投与においてはいずれの薬物も同様の抑制作用を示した.しかし,皮下投与ではFDの作用は比較的弱く,発現も遅いが持続時間はFH,FEと比較し,長いことが認められた.2)ラット体温の下降作用についてはFHが最も強く,FEおよびFDでは軽度であった.3)FEおよびFDは共に強い持続的なcatalepsy惹起作用を現わしたが,FDはFEのそれより弱く,また,回復の遅延傾向が認められた.4)Methamphetamine群毒性抑制作用および抗apomorphine作用においても,FDはFEより持続する傾向がみられたが,拮抗効果は弱かった.5)諸種摘出臓器における各収縮薬に対する拮抗作用に関して,抗NA作用,抗Ad作用および抗Histamine作用はFHが最も強く,FDはFEとほぼ同程度であった.抗5-HT作用はFH,FEにおいてわずかにみられたが,FDでは認められなかった.抗ACh作用はFH,FDで軽度にみられたが,FEでは認められなかった.6)無麻酔ラットの収縮期血圧の下降作用および心電図におよぼす影響はFEよりFDの方が弱かった.7)ラット脳内catccholamine turnoverの検索においては,FH,FE,FDは共にdopamine turnoverを促進したが,FEおよびFDでは持続的な促進傾向が認められた.しかし,明らかなnoradrenaline turnoverの促進効果は認められなかった.以上の結果から,FDはneurolepticsとしての薬理作用を有することが考えられ,その作用はFH,FEと比較して総体的に弱いが,作用の発現が遅く,かつ長く持続する傾向が認められた.このことは,これら薬物の吸収排泄の時間的差異に基づくものと推察され,いわゆるlong-acting neurolepticsであるFDの薬理学的特徴を示唆するものであると思われる.

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