日本薬理学雑誌
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非ステロイド性鎮痛・抗炎症剤Tolmetin sodiumの浸出性炎症におよぼす影響
中村 秀雄横山 雄一元吉 悟石井 勝美清水 当尚
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1979 年 75 巻 5 号 p. 447-458

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抄録

tolmetin sodiumの抗炎症作用の特徴を明らかにする目的で,急性および亜急性の浸出性炎症モデル病態に対する作用および抗炎症作用の機序との関連が推察されるin vitro試験による作用について検討した.マウス酢酸誘発血管透過性亢進反応に対するtolmetinsodiumの抑制効力(ED50=0.75mg/kg,p.o.)は,ibuprofen(Ibu),phenylbutazone(Phe)およびaspirin(Asp)の約6~93倍,indomethacin(Ind)の約0.4倍であり,モルモットにおける紫外線誘発血管拡張-透過性亢進(紅斑)に対する抑制効力(ED50=18.2mg/kg,p.o.)は,Indの約0.3倍であった.kaolin-carrageeninにより誘発した持続性ラット後肢足浮腫に対して,被検薬を2日間に5回連続投与するとき,tolmetin sodiumは,2.5mg/kg,p.o.の低投与量から浮腫の消退を有意に促進させ,その効力はIbuとほぼ同等,Aspよりもやや強く,Indよりも弱かった.croton油誘発亜急性浸出反応に対して,tolmetin sodiumの80mg/kg/day,p.o.以上の投与量で有意な抑制作用を示し,その効力は,Ibu,PheおよびAspよりも優れ,Indの約1/40であった.Indとの相対的効力からみると,tolmetin sodiumは,肉芽形成反応およびadjuvant関節炎に対するよりも,急性浸出性炎症反応に対してより強い抑制作用を有することが示唆される.一方,tolmetin sodiumは,in vitro試験で,ラット赤血球膜安定化作用,血清蛋白質熱変性阻止作用を有し,その強さは,Ibu,Pheと同等,salicylicacid(Sal)よりも優れ,Indより劣るかまたは優れた.また,mitogen刺激によるラット胸腺リンパ球の芽球化反応に対して,Salと同等の抑制作用を示した.in vitroにおけるこれらの結果および既報結果から,tolmetin sodiumが他の抗炎症剤とは相違した作用機序を有するとの示唆は得られなかった.以上の結果から,tolmetin sodiumは,急性の血管透過性亢進―浸出反応に対して特に強い抑制作用を有し,その作用は他の酸性の非ステロイド性抗炎症剤と類似した機序に基いて発現すると推察される.

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